# 吾輩は猫である
## 夏目漱石
吾輩は猫である。
どこで生れたかとんと見当がつかぬ。吾輩はここで始めて人間というものを見た。この書生というのは時々我々を捕えて煮て食うという話である。ただ彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時何だかフワフワした感じがあったばかりである。この時妙なものだと思った感じが今でも残っている。その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片輪には一度も出会わした事がない。そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。これが人間の飲む煙草というものである事はようやくこの頃知った。
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書生が動くのか自分だけが動くのか分らないが無暗に眼が廻る。到底助からないと思っていると、どさりと音がして眼から火が出た。
ふと気が付いて見ると書生はいない。肝心の母親さえ姿を隠してしまった。眼を明いていられぬくらいだ。吾輩は藁の上から急に笹原の中へ棄てられたのである。
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@ 夏目漱石 吾輩は猫である
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